「うちのアシスタント、どうしてこんなに『使えない』んだろう・・・」「全然、指示通りに動いてくれない・・・」
もしあなたが、美容師アシスタントに対してこのような悩みを抱えている先輩美容師、あるいは「自分は『使えない』アシスタントなんじゃないか・・・」と日々葛藤しているアシスタントであるなら、この記事はきっとあなたの役に立ちます。
現役美容師として20年以上お客様と向き合い、ワンオペ美容院を経営するアベです。
私もかつてアシスタントの育成に悩み、またアシスタントとして「使えない」と悩んだ経験もあります。
結論からお伝えします。
「アシスタントが『使えない』」というその考え方、実は勘違いである可能性が高いです。
多くの場合、それはアシスタント個人の能力の問題ではなく、教える側の視点や、育成環境、そしてアシスタント自身の成長の「道筋」が明確でないことに起因します。
この記事では、「なぜアシスタントが『使えない』と感じられてしまうのか」を先輩美容師の視点から深掘りし、アシスタントを「使える」人材へと導く具体的な育成論、さらには「使えない」と悩むアシスタント自身が成長するためのロードマップまで、現役美容師の視点から詳しく解説します。
なぜ「美容師アシスタントが使えない」と感じてしまうのか?【先輩美容師の視点】
先輩美容師が「アシスタントが使えない」と感じる時、その背景には何があるのでしょうか。
具体的な「あるある失敗談」と、その裏に隠された構造的な理由を紐解いていきます。
美容師アシスタント「あるある失敗談」と背景にある理由
先輩美容師が日々目にするアシスタントの「使えない」と感じる行動には、以下のようなものがあります。
カラー剤調合、予約管理などの「技術ミス」
「カラー剤を指示通りに作れない」「予約のダブルブッキングをしてしまう」「シャンプー不要なのにシャンプーしてしまう」など、技術的なミスやサロンワークにおけるオペレーションミスは、先輩美容師が最も「使えない」と感じる典型例です。
しかし、これらは多くの場合、経験不足、手順の理解不足、または指示の不明確さが原因であり、悪意があるわけではありません。
指示待ち、言われたことしかやらない「行動ミス」
「なぜ言われないと気づかないんだろう」「今やるべきはそれじゃないのに」と感じるような、指示待ちの姿勢や、優先順位を理解していない行動も「使えない」と映りがちです。
これはアシスタントが「考えるクセ」がついていない、または「仕事の全体像」が見えていないために起こることがほとんどです。
寝坊、体調不良などの「自己管理不足」
朝が早く夜も遅いアシスタントにとって、寝坊や体調管理は難しい課題です。
疲労の蓄積やストレスが原因となることもありますが、先輩美容師からは「プロ意識が低い」「自己管理ができていない」と見なされ、「使えない」という評価に繋がってしまうことがあります。
「使えない」と感じる先輩側の根本的な原因
アシスタントの行動は、多くの場合、先輩美容師の「教え方」や「期待値」に原因があることがあります。
「教え方」が一方的になっていないか?
「見て覚えろ」「一度言ったのに」といった一方的な指導では、アシスタントは主体的に学ぶ機会を失います。
教える側が「伝えたつもり」になっていても、アシスタントが「理解している」とは限りません。具体的な手順、理由、そして実践の場を提供できているか、振り返る必要があります。
自分の経験と比較していないか?
経験豊富な先輩美容師は、無意識のうちに自分のアシスタント時代と比較しがちです。
「私ならできたのに」「なぜこんなことも分からないのか」という比較は、アシスタントの現状を正しく評価する妨げになります。
アシスタントは、あなたの「分身」ではないと認識することが重要です。
同じ人間なんていないのですから。
アシスタントへの「期待値設定」は適切か?
アシスタントの経験年数やスキルレベルに見合わない過度な期待は、「使えない」という評価に繋がりやすくなります。
例えば、入社間もないアシスタントに複雑な業務を任せていないか、個々の成長スピードを考慮したカリキュラムになっているかなど、現実的な期待値の設定が求められます。
「アシスタントが使えない」は教育する側の責任!意識改革で変わる育成論
もしアシスタントが「使えない」と感じるなら、それはアシスタント個人の責任ではなく、教育や育成システムに改善の余地があると捉えるべきです。
この意識改革こそが、アシスタントを「使える」人材へと導く第一歩です。
「使う」から「育てる」へ意識を変換する重要性
アシスタントは単なる「手伝い」ではなく、将来のスタイリスト、ひいてはサロンを支える「未来の財産」です。
「使う」という一時的な労働力としての視点から、「育てる」という長期的な投資としての視点へ変換しましょう。
アシスタントを雇う「本当の目的」とは?
私自身、一人で経営していますが、以前アシスタントを雇っていた時期もあります。
正直、アシスタントに任せるよりも全て自分でやった方が確実だと感じることもありました。
それでもアシスタントを雇うのは、「育てる」という明確な目的があるからです。
彼らの成長が、将来の売上やサロン全体の発展に繋がるという未来への投資意識を持つことが不可欠です。
雑務にも「意味」を与え、仕事への理解を深めさせる
アシスタントの中には、掃除や洗濯といった雑務にうんざりする人も多いでしょう。
しかし、これらの業務もお客様が快適に過ごすためには不可欠な仕事です。
単に「やれ」と指示するだけでなく、「なぜこの掃除がお客様の安心に繋がるのか」「洗濯がなぜ衛生管理上重要なのか」といった仕事の「意味」を伝えることが、彼らのモチベーションと理解を深めます。
他人はコントロールできない!アシスタントを自律的に動かす方法
自分の思い通りにアシスタントを動かしたいと思うのは自然な感情ですが、他人はコントロールできません。
アシスタントを自律的に動かし、成長させるためのアプローチが必要です。
指示待ちにさせない「考えさせる」問いかけ
自ら動けないアシスタントは、「考えるクセ」がついていないことが多いです。先輩が一方的に指示を与えるだけでは、指示待ち人間になってしまいます。
「どうしたらいいと思う?」「これの目的は何だと思う?」といった問いかけを通じて、アシスタント自身に考えさせる機会を与えましょう。
最初は答えられなくても、繰り返すことで「考える能力」が養われ、自ら行動できるようになります。
「ゆだねる」ことで生まれる責任感と成長
アシスタントに仕事を「ゆだねる」ことは、彼らに責任感と達成感を与え、成長を促します。
もちろん、全てを丸投げするのではなく、能力を把握した上で適切な仕事を任せ、管理しながら経験を積ませることが重要です。
彼らの人生を背負っているという意識で関わることで、アシスタントは将来、あなたを支えるビジネスパートナーへと成長してくれる可能性を秘めています。
「使えない」と悩むあなたへ:美容師アシスタントが成長するためのロードマップ
もしあなたが「自分は『使えない』アシスタントだ・・・」と悩んでいるなら、決して一人で抱え込まないでください。
誰もが通る道であり、正しい努力と視点で必ず成長できます。
スタイリストへの道:平均的なアシスタント期間と成長のポイント
美容師アシスタントの期間は、平均で2〜4年と言われています。この下積み時代を乗り越え、スタイリストとしてデビューするために必要な成長のポイントを理解しましょう。
「できなくて当たり前」と自覚する謙虚さ
美容専門学校を卒業したばかりでは、美容師に必要なスキルのほとんどは身についていません。最初から完璧にできる人はいません。
「できなくて当たり前」と自覚し、プライドを捨てて素直に学ぶ姿勢が何よりも大切です。失敗を恐れず、改善点を積極的に探しましょう。
効率的な練習と「目で盗む」習慣
ただ長時間練習するだけでは非効率です。目標を設定し、必要な技術をリストアップして計画的に練習しましょう。
先輩の技術を「目で盗む」ことも重要です。
先輩の動きや会話、お客様との接し方をよく観察し、自分に取り入れられることは積極的に真似してみましょう。
YouTubeなども活用できます。
自ら学び、行動する「主体性」を育む
指示される前に、次に何をすべきか、お客様やサロン全体のために何ができるかを常に考える習慣をつけましょう。
先輩に質問するだけでなく、「〜と考えていますが、どうでしょうか?」と自分の意見を添えて相談するなど、主体的な姿勢は先輩からの信頼獲得につながります。
困難を乗り越える!アシスタント時代の辛い時期の対処法
アシスタント時代は、低賃金、長時間労働、人間関係の悩みなど、辛いと感じることも多いでしょう。これらの困難を乗り越えるための対処法を紹介します。
長時間労働・低賃金との向き合い方
アシスタントの平均年収は仕事のハードさに比べて決して高いとは言えません。
しかし、この期間は「自己投資」と捉え、将来のスタイリストとしてのキャリアを見据えることが重要です。
スキルアップのための練習時間を確保しつつ、必要であれば休息をしっかり取り、心身の健康を保ちましょう。
人間関係のストレスを軽減する方法
美容業界は上下関係が厳しいサロンも少なくありません。
人間関係のストレスを感じたら、一人で抱え込まず、信頼できる同僚や友人、家族に相談しましょう。
パワハラなどひどい状況であれば、社内の相談窓口や外部機関への相談も検討してください。
パワハラ対策をさらに詳しく
限界を感じたら「誰かに相談」する勇気
「もう無理だ・・・」と限界を感じた時は、一人で無理をせず、先輩やオーナーに正直に相談する勇気を持ちましょう。
サロンによっては、教育体制を見直したり、あなたの悩みに寄り添ってくれることもあります。
相談することで、解決策が見つかるだけでなく、心の負担も軽くなります。
もし「美容師アシスタントを辞めたい」と感じたら考えるべきこと
「使えない」と感じて辛い日々が続き、最終的に「美容師アシスタントを辞めたい」と考えることもあるでしょう。
その時に後悔しない選択をするために、いくつか考えるべきポイントがあります。
アシスタント時代に「辞めたい」と思う主な理由
アシスタントが「辞めたい」と思う主な理由には、以下のようなものがあります。
- 給与・待遇への不満: 低賃金と長時間労働のバランス。
- 拘束時間の長さ: 練習時間を含めプライベートの確保が困難。
- 人間関係のストレス: 上下関係やスタッフ間の摩擦。
- 教育・指導体制への不満: スキルアップが見込めない、放置されていると感じる。
- 将来のキャリアへの不安: いつスタイリストになれるのか、なっても大丈夫なのかという漠然とした不安。
- 美容師に向いていない不安: 技術が身につかない、ミスが多いと感じる。
- 身体的な負担: 手荒れ、腰痛など。
辞める前に試すべきこと・考えるべきこと
もし上記のような理由で「辞めたい」と感じているなら、すぐに辞める決断をする前に、いくつか試してほしいことがあります。
今のサロンで改善できないか相談する
労働条件、教育体制、人間関係など、具体的に何に悩んでいるのかを率直にサロンの責任者に伝えてみましょう。
改善の余地があるかもしれません。
別の美容室を検討する
サロンによって教育方針や雰囲気は大きく異なります。今のサロンが合わないだけで、他のサロンならあなたの良さが活かせる可能性もあります。
情報収集や見学をしてみましょう。
美容師を辞めたいときの対処法をさらに詳しく
転職エージェントに相談する
美容業界専門の転職エージェントは、あなたの悩みを聞き、適したサロンや、あるいは美容業界以外でのキャリアの可能性についてもアドバイスをくれます。
私がインタビューした理美容専門エージェント「フミダス美容」は元理美容師がアドバイザーとしてあなたの転職先の無料相談に応じてくれますよ。
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円満退職のポイントと次のキャリア
それでもやはり辞めるという決断に至った場合は、円満退職を目指しましょう。
早めに意思を伝える
最低でも退職希望日の1ヶ月〜2ヶ月前には直属の上司に意思を伝えるのが一般的です。
退職理由は前向きに
「スキルアップしたい」「新しい分野に挑戦したい」など、前向きな理由を伝えることで、スムーズに話を進めやすくなります。
引き継ぎを丁寧に行う
最後の仕事として、担当業務の引き継ぎをしっかりと行い、サロンに迷惑をかけないように配慮しましょう。
美容師アシスタントの経験も他業界で活かすことが可能です。
元美容師はどんな業界に転職しているのか具体例などが知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
美容師からの転職実態をさらに詳しく